令和4年 予備試験  商法  再現

設問1

1 Dとしては、本件取引が「株主の権利の行使に関し」て行われたものとして、利益の返還を求めるという主張が考えられる(会社法(以下法名略)847条1項、120条1項、3項)

しかし、Cは、純粋に売買契約の一方当事者として本件取引を行っている。そのため、「株主の権利の行使に関し」という要件を満たさない。

2 また、Cは、2億円で本件土地を売却している。その為、甲社は、「有償で財産上の利益を供与」したといえる。しかし、本件土地の適正価格は2億円であったため、「当該株式会社・・・・の受けた利益が当該財産上の利益に比して著しく少ないとき」ともいえない。そのため、120条2項後段の要件も満たさない。そのため、Dのこの主張も認められない。

3 次に、Dは、A,B、Eに対して、本件取引が経営判断の原則に反し、それが「任務を怠った」として、423条の責任を追及することが考えられる。

 取締役は、会社に対して忠実義務を負っており(355条)、その内容として経営判断の原則に従ってその職務を行うことが求められる。

 しかし、この経営判断の原則については、これに違反することを広く認めてしまうと、取締役が職務を行うことのい縮につながる。その為、行為時の状況において、判断に不合理な点がなかったか否かという観点から決定される。

 たしかに、不動産業者から提案された土地の方が、円滑に商品を出荷することに適していたのであるから、この土地を買い取るべきであったといえる。

 しかし、本件土地自体は、元々倉庫建設に適したものであった。更に、Aが本件取引に応じた経緯は、CとDが協調して行動することを恐れたというものであり、このような経営上のトラブルを避けることも経営上の判断としては重要である。

 以上を鑑みると、Aらが本件取引をおこなったことは行為時の状況において、不合理であったとはいえない。そのため、Aらが本件取引を行ったことは、経営判断の原則には反せず、「任務を怠った」ともいえず、Dのこの主張も認められない。

設問2 

1 Aらとしては、甲社の監査役であるFが甲社の完全子会社である乙社の取締役となっていることから、兼任禁止規定(335条2項)に反するとして、その様な者になされた本件提訴請求は適法であるとはいえないと主張することが考えられる。

2 しかし、Fが乙社の取締役となった経緯は、AがFに対して乙社の取締役に就任することを要請して、これに対してFが就任すると返答したものであった。そうすると、Aが自らFに対して乙社の取締役になる様に要請しておきながら、その者に対して提訴請求するのが適法ではないと主張するのは、一種の矛盾挙動であって、信義則(民法1条2項)に反する。そのため、この主張は認められず、本件訴えは違法であるとはいえない。

以上

 

所感

よくてCかな!!

設問2なら兼任禁止は明らかに問題文の事情から浮いていたので、何となく書いたが、これでいいわけない。

 

 

11月3日追記

評価F

ここまで悪いとは正直思わなかった。

 

敗因の一つは利益供与の請求の点で誰に対してどういう請求ができるのかという点を全く書いていなかったという点か、、。

また、各要件の定義、意義を全く考えず、勉強せずに書いているのも悪い。

 

経営判断の原則の方も点が入ってないと考えられるから、そもそもの理解がおかしかったのか。

 

設問2

論述の流れ的には、提訴請求は監査役になされる→Fは兼任禁止で、監査役ではない→でもAは自らFを監査役にさせてるから矛盾挙動で違法と主張は許されない。

みたいな流れで書ければ、良かったか。