令和2年 司法試験予備試験 再現答案  刑事実務基礎

再現答案 刑事実務基礎 
設問1(1)
たしかに、Aの指紋が応接テーブルの上面から採取された事実から、Aが犯人であることが推認される。
しかし、AはVに対して再雇用を頼むために、何度もクリーニング店を訪ねており、V方にも訪ねていた可能性がある。Bは、AがVに用があるときは、いつもクリーニング店を訪れており、AがV方に上がったことはなかったと供述しているが、それはBが知る限りのことのため、AがV方に訪れたことの可能性を否定するものでもない。そのため、上記の指紋は、Aが別の機会にV方に訪れたときに付着した可能性があることから、この事実はAの犯人性を推認する事実としては、その推認力は限定的である。

設問1(2)
まず、証拠⑩、証拠⑪のナイフは、人血が付着しており、そのDNAはVのものと一致しており、さらに司法解剖医の見解から、このナイフは本件事件で用いられた凶器と推認することが可能である。そして、証拠⑨から、このナイフはM県N市O町の竹やぶの中から発見されたことがわかる。一方で、証拠⑦で、Cは、Aが人をナイフで刺し、それに用いたナイフは、高校近くのM県N市O町の竹やぶに捨てたと聞いた旨の供述している。
上記から、Aが捨てたナイフは、証拠⑩のナイフと一致していることが推認される。
また、証拠⑧により、Cの携帯電話から、登録名がAの姓名で登録されている者からの着信があることが確認でき、その着信の日時は、証拠⑦のAから着信があった旨のCの供述と矛盾するものではない。
以上により、AがVを殺害した後に、その犯行に用いたナイフを、高校の近くのM県N市O町にある竹やぶに捨てたとの推認が働き、Aの犯人性も推認される。


設問2(1)
刑事訴訟法(以下刑訴法)316条の15 1項5号イないしロにより、類型証拠開示請求をするという手段を採るべきである。その際には、W2以外の者の供述がW2の供述と矛盾する場合に、W2の供述録取書の証明力が減殺されることが、W2の供述録取書の証明力の判断をするために重要であり、Aの防御の準備のために必要であることを、明らかにするべきである。(316条の15 3項1号ロ)

設問2(2)
証拠⑥のW1の供述は詳細は分からないが、Ⅴ方から男性の大きな怒鳴り声が聞こえたというものであり、W2の供述と矛盾するものではなく、W2の供述の証明力を減殺するものではない。そのため、検察官は、証拠⑥をAの弁護人に開示した。

設問3
1、Aの弁護人は、刑訴法320条1項により、Cの証言はAの発言を含むものであることから、「公判期日外における他の者の供述を内容とするもの」として証拠能力が否定されると述べているものと考えられる。
2、この点については、同条同項で証拠能力が否定されるのは、伝聞証拠は知覚、記憶、表現という過程を通して作成されるものであり、その各過程に誤りが入り込む恐れがあり、その誤りを反対尋問等でチェックする必要があるためである。
 そうすると、原供述者に対して、この反対尋問等が必要ない場合には、同条同項では証拠能力は否定されるものではないものと解する。
3、本件では、検察官は、CがAの「人をナイフで刺してやった」という発言を聞いたこと自体を立証しようとしているものと考えられる。そうすると、現に今、Cに対して、証人尋問を行っており、Aに対しては、反対尋問を行う必要がない。
 以上により、伝聞証拠として証拠能力は否定されず、裁判所は証拠排除決定をなすべきではない。

設問4
Aの弁護人としては、保釈請求却下に対して、準抗告429条1項2号)をし、Aの父の葬儀に出席することが、職権による保釈(刑訴法90条)を許すべき事情に該当すると主張するという手段を採るべきである。
以上

感想
もう9科目目だけど、後悔しまくってる。
もっと勉強しておけば。。。