令和4年 予備試験  刑法  再現

設問1

1 甲がYに高級ブドウを万引きするように指示した行為について

(1)上記行為に甲に窃盗(刑法(以下法名略)235条)の共同正犯(60条)が成立するか。甲は、Yに対して、指示をしているのみであり、実際には実行行為を行っているわけではない。そのため、この様な行為を行っていない者も共同正犯となるかが問題となる。

(2)この点について、共犯の処罰根拠は自己の行為が結果に対して因果性を与えたという点に求められる。その為、①共謀、②共謀に基づく実行行為、③正犯意思が認められれば実行行為を行っていない者も共同正犯となる。

 本件ではまず、「さっきのブドウを持ってきて」とYに言っており、Yは甲の口調い怖くなりながらも、「分かった」といい、承諾している為、共謀が認められる(①)。また、甲が主導的にブドウをYに万引きさせようと考えていた為、正犯意思も認められる。(③)もっとも、Yはブドウをとらずに帰宅している。

(3)この場合でも、実行行為の着手(43条1項)が認められるか。

この点、実行行為は法益侵害の結果発生の現実的危険が認められた時点で着手があったといえる。

Yは、店に着いても、10分かけて店内を探したにもかかわらず、ブドウを発見できずにいた。そのため、ブドウを手に取ることもなく、この場合には、窃盗罪の法益侵害の現実的危険性が認められない。そのため、Yは実行に着手したとは言えない。

以上により、甲は窃盗罪の共同正犯としての罪責を負わない。

2 甲がXに対してステーキ用の牛肉を万引きするように指示した件について

(1)上記行為についても、甲に窃盗罪の共同正犯が成立するか検討する。なお、本件においては、甲はXに対して行為支配性を有しているわけではない為、間接正犯は成立しない。

(2)甲は、Xにステーキ用の牛肉を「とってきてよ」と指示しており、これに対してXは渋々ながらも「分かった」といい、これに応じており、共謀は成立している(①)。また、甲は主導的な立場から、上記の様にXに対して指示を与えており、正犯意思も認められる。(③)では、実行行為は認められるか。

(3)Xは、C店に置いてある「他人の財物」であるステーキ用牛肉5パック及びアイドルの写真集をエコバックにいれており「窃取」したといえる。

また、牛肉については、家族で食べるために、写真集については自分で楽しむために、上記行為を行っており、不法領得の意志も認められる。

そのため、甲に窃盗罪の共同正犯が成立するように思える。

(4)もっとも、甲は、ステーキ用牛肉を2パックとってきてと言っていたにもかかわらず、Xはステーキ用牛肉を5パック、更に写真集も持ってきている。この場合にも、共犯者間で認識していた事実と発生した事実とが異なる場合においても共同正犯が成立するか。

 共犯者間で認識した事実と発生した事実が異なっていた場合でも構成要件の範囲内で客体が一致している以上、故意は阻却されない。また、この様に構成要件の範囲内で客体の認識を抽象化する以上、故意の個数は問題とならない。

本件では、甲が指示したステーキ用牛肉2パックと5パックというのは構成要件の範囲内で、符合するものであり、この点について故意は阻却されない。他方で、アイドルの写真集は構成要件の範囲内で符合するものではなく、この点については、甲の故意は阻却される。

以上により、甲は、ステーキ用牛肉5パックの限度で窃盗の共同正犯となる。

設問2

(1)考えられるものは、①財物を奪取していない、②窃盗の機会ではない、③事後窃盗の「暴行」を行っていないという主張である。

(2)まず、①について、事後窃盗罪は財産犯であることから、その既遂、未遂は財物の取得の有無で判断される。本件では、甲は箱を陳列棚に戻していることから、最終的には財物の取得を果たしていない。その為、未遂となる。

(3)②については、明文はないが、事後窃盗の暴行、脅迫は窃盗の機会になされなければならないと解されている。そして、その判断は、①時間的場所的接着性及び②被害者からの追及可能性という観点から判断される。

 甲は、逃走後、400メートル離れた公園に行っており、更に、そこで10分間とどまっていたのだから時間的場所的接着性は認められない。また、Fは、甲が公園にとどまっている間、甲を見失っていたのでから、追及可能性もなくなっていたといえる。その為、窃盗の機会に暴行がなされたとはいえず、未遂である。

(4)③については、事後強盗の暴行は財物奪取に向けられたものでなければならない。しかし、本件の暴行はそれにあたらず、事後強盗の暴行ではなく、構成要件を満たさない。

 

 

所感

どんなにポジティブに見積もっても評価はEが最高か?

まず、設問1はYのところで、間接正犯を全く検討しないというミス(いや、この辺は問題になることはわかってたんですよ?)あと、Xで、共謀の射程を検討しないというのと共犯の錯誤もフワッとした問題提起で、体系上のどこを問題にしているのかがわからないという惨状。(なお、錯誤は問題にならない可能性??)

設問2は③で、「反抗を抑圧しない」で書こうとしたが、押し倒しているから無理なんじゃね?ということで訳の分からない論を展開。条文上、「逮捕を免れる…ために」って書いてあるから、絶対間違ってるのはわかる。これに気づいたのも、終了30秒前くらいだったため、万事休すで終戦

 

 

10月30日追記

 

評価 F

正直、ここまで酷いとは、、、

いきなり、間接正犯ではない法律構成をとった時点で論外という感じか??

多分、まわりの受験生は皆できてるところだからこの時点で一発アウトといった感じか??