令和4年 予備試験  刑事実務基礎  再現

設問1(1)

1 Bは、3月1日の夜に「一緒に・・金を奪わないか。』とAから誘われたと供述しており、これは証拠⑪により、Bの携帯電話に同日午後8時32分にAからの着信の履歴があることから、この供述の信用性が認められる。

また、Bは、犯行にナイフを用いており、そのナイフをAから受け取る際に、「親父のだから、落としたりするなよ」と言われた旨を供述している。この点について、A方からサバイバルナイフが差し押さえられており(証拠⑫)、そのナイフから、Bの指紋が採取されている。更に、A父は、そのナイフについて、「私のものに違いない」と供述している。このことから、このBの供述の信用性が認められる。

更に、Bは、犯行後にコンビニに寄った旨も供述しており、この供述と一致するような状況が、証拠⑦の防犯カメラ画像から確認することができる。そのため、この部分のBの供述の信用性が認められる。

検察官は、以上の様な思考過程を経て、本件被告事件に関与したのはAであるとする供述部分の信用性が認められると判断した。

設問1(2)

共謀共同正犯は①共謀、②①に基づく実行行為、③正犯意思が認められれば、成立する。

Aは、3月1日に、Bに電話で、「金を奪わないか」といい、これに対してBは承諾している為、①共謀が認められる。

そして、BはAと事前に話し合った計画通りに犯行を実行していることから、上記の共謀に戻づく実行行為が行われた事実も認められる(②)。

更に、Aは自らBに対して電話をかけていることから、正犯意思も認められる(③)。

検察官は、以上のような思考過程を経て、Aに共謀共同正犯が成立すると判断した。

設問4(1)

Bの「当日私が着ていた作業着やロープもAが用意したものだ。」旨の証言は、犯行に用いたものをだれが用意したのかという点で、その内容の真実性が問題となることから、320条により証拠能力が否定されるのが原則である(刑事訴訟法第320条)。

しかし、自己矛盾供述であれば、「供述の証明力を争うために」この証拠能力が認められる(刑訴法328条)。

Bは、警察官の前では、作業着やロープは自分で用意した旨の発言をしておきながら、証人尋問では、「作業着やロープもAが用意したものだ」と証言しており、これは自己矛盾供述にあたる。

そして、Aの弁護士としては、Bが犯行に用いたものを用意した場合には、犯情の点においてAに有利となる為、このような思考過程を経て、証拠能力が認められるとした。

また、「やむを得ない事由」については、証人尋問において、このような自己矛盾供述をするとは予想ができなかった為、「やむをえない事由」があると考えた。

設問4(2)

検察官が「同意」という証拠意見述べてしまうと、裁判所の審査を経ることなく、証拠⑩に証拠能力が認められてしまうことになる(刑訴法326条)。そのため、検察官が「異議なし」との証拠意見を述べた。

設問2

公判前整理手続きは争点を明確にすることが目的であるところ、検察官の提出した証拠のみでは争点が不明瞭となることから追加の証明予定事実記載書の提出を求めた。

設問3

エの時点では、逃亡や罪証隠滅のおそれがその時点で生じていなかったため、このような異なる対応をとった。

以上

 

所感

設問2.3をパッと見てわからなかったために後回しにしたが、設問4の書き方に迷いまくり、結果全てがボロボロという最悪なことになった。

民事も良くなかったし、Fあるかもなー。

令和4年  予備試験  民事実務基礎  再現

設問1(1)

ア請負契約に基づく報酬支払請求権、イ履行遅滞に基づく損害賠償請求権

設問1(2)

被告は原告に対して300万円及びこれに対する支払い済みまで年3分の割合による金員を支払え

設問1(3)

①原告は被告との間で、令和4年2月8日、報酬を700万円として、本件工事の請負契約を締結した。

②令和4年5月28日、原告は被告に、本件建物を引き渡した。

設問1(4)

アについては、民法632条本文から①の記載が必要となる。また、報酬の支払いは、民法633条の記載から、仕事の目的物の引き渡しと同時履行となることからこの記載が必要となる。

イについては、履行期が徒過したことを示すために、②の記載が必要となる。

設問2(1)(ⅰ)

(ア)被告は原告との間で、本件工事の請負契約を報酬700万円で締結した。

設問2(1)(ⅱ)

債務の免除をする意思表示の前提として、本来の契約の報酬額を明示する必要があったため、アのような記載をした。

設問3

1 本件見積書①と本件見積書②はともに、契約締結の前段階における、あくまで報酬の見積額を示す書類に過ぎず、契約書ではない。そのため、ⅩとÝが本件契約を締結した事実を直接証明する証拠は無い。

2 Ýの主張について

Yは、本件見積書①は、銀行の融資を受けるために、300万円を上乗せしたと主張した。しかし、通常、経営者が融資を受ける際には、実際の見積額を提示するはずであるし、実際の見積額と異なる金額を提示するのは、虚偽の数字を提示することになる。したがって、この主張は信用できない。

また、Yは本件見積書②について、外壁工事分はサービスするといわれたと主張する。しかし、建物のリフォームをする業者としては、見積書を作成する際には、全ての工事項目を記載ずるはずであるし、サービスをするのであれば、その旨の記載をするのが通常であると考えられる。そのため、このYの主張も信用することが出来ない。

3 Xの主張について

本件見積書①については、建物のリフォームをする業者であるXが、実際にその建物を見たうえで作成したものであり、この見積書をもとに契約を締結したものと考えられる。

また、見積書②については、Yが賃貸人から本件工事について承諾を得るために作成したものであると主張しており、XとYは10年来の仲である友人であることから、このような見積書を作成することは不自然なことではない。

以上の点から、Yの主張よりも、Xの主張の方が信用することが出来るため、本件契約を締結した事実が認められる。

設問2(2)

契約不適合を理由とする債務不履行に基づく350万円の損害賠償請求権を自働債権として、予備的相殺の抗弁という訴訟行為を選択する。

設問4

強制執行の不許を求めることが出来る。

関係する条文は、民事執行法11条1項である。相殺の抗弁は、受働債権の存在を認めたうえで行うものであり、敗訴を覚悟して行うものであることから、口頭弁論終結前の事由であっても、この主張をすることが、前訴において期待することができない。そのため、上記のような結論となる。

 

所感

評価はよくてDくらいか。結構難しい問題だったと思うので、設問3の出来で大分左右されそう。

設問4の条文とか、色々ミスしすぎ。

令和4年 予備試験  経済法  再現

1 X社は、「他の会社である」Y社の「事業の・・・重要部分」である甲の製造販売事業を譲り受けることを計画している。以下、この行為が独占禁止法16条1項に違反するか以下検討する。

(1)一定の取引分野

これは市場のことを指す。そして、商品、役務の範囲及び地理的範囲を、基本的には、需要者からの代替性から判断し、補充的に、供給者からの代替性が認められるかという点も考慮に入れて、市場を確定する。

まず、X社は、甲の製造販売を行っているのであるから、商品の範囲は甲が挙げられる。

乙の部品として甲に代わるものはなく、また、乙の部品として用いる以外に甲の用途はなく、大型甲の代わりに小型甲を用いることはできず、小型甲の代わりに大型甲を用いることもできない為、需要者側からの代替性は認められない。また、大型甲の製造設備を小型甲の製造設備に変更することはできないし、小型甲の製造設備 を大型甲の製造設備に変更することもできないのであるから、供給者側からの代替性も認められない。このことから、商品の範囲は、大型甲と小型甲の二つに分けられる。

さらに、X社とY社は、甲を世界中に販売しており、販売価格に占める輸送費や関税の割合は小さく、大型甲及び小型甲のいずれの取引においても、国ごとの価格差はないのであるから、地理的は範囲は、世界中となる。

以上の点から、市場は、世界における大型甲の製造販売市場と世界における小型甲の製造販売市場が挙げられる。

(2)競争を実質的に制限

これについては、事業者又は事業者団体が価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することができる状態をもたらした場合には認められる。以下、2つの市場に分けて検討する。

(ア)大型甲の製造販売市場

本件計画を行うことになると、X社が90%のシェアを有することになり、ほとんど、この市場を独占することになる。そして、大型甲の需要減少に伴い、X社及びY社は、大型甲について十分な製造余力を有する一方で、A社は、大型甲の製造設備を縮小してきており、大型甲について製造余力を有しない。このような、状況に鑑みると、本件計画が行われると、X社が単独で、大型甲の価格等の条件を左右することができるようになる。そのため、競争を実質的に制限することになるといえる。

(イ)小型甲の製造販売市場

この市場においては、本件計画が行われることがあっても、X社のシェアは30%にとどまり、過半数まで達するわけではない。そして、近年、小型甲に対する需要は増加傾向にあり、モバイル型乙及び小型甲をめぐっては技術開発を含む活発な競争が行われており、小型甲の製品サイクルは短い。さらに、X社及びY社が小型甲について十分な製造余力を有しないのに対して、A社、B社及びC社は小型甲について十分な製造余力を有している。さらに、モバイル型乙の製造販売業者は、小型甲の製造販売業者に対し て取引交渉上の地位が強く、さらに、低価格調達のために発注方法を工夫している。このような状況に鑑みると、本件計画が行われたとしても、まだ競争が行われることが予想され、競争を実質的に制限することにはならない。

2 以上により、大型甲での製造販売市場では、法16条1項に反することになるが、小型甲の製造販売市場では、法16条1項には反しない。

 なお、本件計画は、Y社の大型甲の製造販売部門は大幅な赤字が続いていることから行われようとされている為、正当な理由はない。

以上

 

所感

なるべく、全ての事情を拾ったつもり。しかし、評価が薄すぎた気がする。現場では、もう少し、事実の拾い方を端折って、評価をもうちょっと書いた気がするが、試験後2週間程度ではこのくらいしか覚えてない。

 

選択科目は初年度ということで簡単な問題だったのは間違いない。そのため、優秀層には、書き負けてけてしまっている気がするため、Cとか行くのが限界か。。。。

 

 

11月1日追記

評価F

結合関係を書かなかったことがまず一つの致命的なミスか??更に、単独的行動、協調的行動による競争の実質的制限の検討も漏れてしまっている。答案の型からして、ダメだった。

 

また、大型甲については、正当理由を検討するのに十分な材料が問題文にあったのにガン無視してしまった。、、

令和4年 予備試験 民訴 再現

設問1

1①の方法について

(1)この方法による場合、Xに「団体性」(民事訴訟法(以下法名略)29条)が認められれば、この訴えは適法となる。

(2)ここで、「団体性」は、①団体としての組織を備え、②構成員の変動にもかかわらず団体そのものは存続し、③代表者の定めがあり、④その他、団体としての主要な点が確立している場合に認められる。

(3)Xは、自動車の愛好家らによって創設されたクラブであり、20年近くにわたって継続的に活動がなされているのであるから、団体としての組織を備えているといえる(①)。

また、20年近くに渡り、継続的に活動を行ってきたのであるから、構成員の変動にもかかわらず団体そのものは継続されてきているものと考えられる(②)。さらに、AはXの代表者として定められている(③)。そして、Xは不動産等の財産を有しているため、その他の団体としての主要な点が確立しているといえる(④)。

以上により、Xには、「団体性」が認められ、①の方法は適法となり得る。

(4)では、Xの中の構成員に反対者がいる場合には、この適法性に影響を与えるか。

この点については、この反対者がいるという事情は、Xの内部事情に過ぎない。その為、この事情は①の方法に対して影響を与えない。したがって、①の方法は適法である。

設問2 

1アについて

(1)142条において、重複起訴が禁止されている趣旨は、判決の矛盾の防止、被告の応訴の煩、訴訟不経済の防止という点に求められる。この様な趣旨から、重複起訴にあたるか否かは①当事者の同一性、②審判対象の同一性という観点から判断する。

(2)本件では、本訴と別訴では、当事者はXとYであり、原告と被告が入れ替わっているのみであるから、当事者の同一性は認められる(①)。そして、本訴の訴訟物は甲土地の総有権の確認であり、他方で、別訴の訴訟物は、所有権に基づく甲土地の明渡請求権であるから、訴訟物は本訴と別訴で異なっている。しかし、この二つの訴訟物は、同じ甲土地の利用に関する権利に関するものであるから、矛盾抵触のおそれはある。その為、審判対象の同一性も認められる。以上により、本件別訴は142条に反し、適法ではない。

2イについて

(1) 既判力は、「主文に包含するもの」(114条)つまり、訴訟物に限り、その効力を有する。
前訴の訴訟物は、甲土地の総有権の確認であり、後訴の訴訟物は、所有権に基づく甲土地の明渡請求権であるから、前訴と後訴で訴訟物は異なるのであるから、前訴判決の既判力は後訴に対して何ら効力を及ぼさない。

(2) また、既判力は矛盾関係、同一関係、先行関係となる場合でも、後訴に対して、既判力を及ぼす場合がある。
しかし、前訴と後訴とでは、このような関係は認められない。そのため、この点からも前訴の既判力は後訴に対して何ら効力を及ぼさない。

設問1

2、②の方法について

この方法は、任意的訴訟担当として適法となる。そして、この場合も、構成員の中に反対者がいるという事情は、Xの内部事情に過ぎない。そのため、この方法も適法となる。

以上

 

所感  

論外!

以上!

令和4年 予備試験  商法  再現

設問1

1 Dとしては、本件取引が「株主の権利の行使に関し」て行われたものとして、利益の返還を求めるという主張が考えられる(会社法(以下法名略)847条1項、120条1項、3項)

しかし、Cは、純粋に売買契約の一方当事者として本件取引を行っている。そのため、「株主の権利の行使に関し」という要件を満たさない。

2 また、Cは、2億円で本件土地を売却している。その為、甲社は、「有償で財産上の利益を供与」したといえる。しかし、本件土地の適正価格は2億円であったため、「当該株式会社・・・・の受けた利益が当該財産上の利益に比して著しく少ないとき」ともいえない。そのため、120条2項後段の要件も満たさない。そのため、Dのこの主張も認められない。

3 次に、Dは、A,B、Eに対して、本件取引が経営判断の原則に反し、それが「任務を怠った」として、423条の責任を追及することが考えられる。

 取締役は、会社に対して忠実義務を負っており(355条)、その内容として経営判断の原則に従ってその職務を行うことが求められる。

 しかし、この経営判断の原則については、これに違反することを広く認めてしまうと、取締役が職務を行うことのい縮につながる。その為、行為時の状況において、判断に不合理な点がなかったか否かという観点から決定される。

 たしかに、不動産業者から提案された土地の方が、円滑に商品を出荷することに適していたのであるから、この土地を買い取るべきであったといえる。

 しかし、本件土地自体は、元々倉庫建設に適したものであった。更に、Aが本件取引に応じた経緯は、CとDが協調して行動することを恐れたというものであり、このような経営上のトラブルを避けることも経営上の判断としては重要である。

 以上を鑑みると、Aらが本件取引をおこなったことは行為時の状況において、不合理であったとはいえない。そのため、Aらが本件取引を行ったことは、経営判断の原則には反せず、「任務を怠った」ともいえず、Dのこの主張も認められない。

設問2 

1 Aらとしては、甲社の監査役であるFが甲社の完全子会社である乙社の取締役となっていることから、兼任禁止規定(335条2項)に反するとして、その様な者になされた本件提訴請求は適法であるとはいえないと主張することが考えられる。

2 しかし、Fが乙社の取締役となった経緯は、AがFに対して乙社の取締役に就任することを要請して、これに対してFが就任すると返答したものであった。そうすると、Aが自らFに対して乙社の取締役になる様に要請しておきながら、その者に対して提訴請求するのが適法ではないと主張するのは、一種の矛盾挙動であって、信義則(民法1条2項)に反する。そのため、この主張は認められず、本件訴えは違法であるとはいえない。

以上

 

所感

よくてCかな!!

設問2なら兼任禁止は明らかに問題文の事情から浮いていたので、何となく書いたが、これでいいわけない。

 

 

11月3日追記

評価F

ここまで悪いとは正直思わなかった。

 

敗因の一つは利益供与の請求の点で誰に対してどういう請求ができるのかという点を全く書いていなかったという点か、、。

また、各要件の定義、意義を全く考えず、勉強せずに書いているのも悪い。

 

経営判断の原則の方も点が入ってないと考えられるから、そもそもの理解がおかしかったのか。

 

設問2

論述の流れ的には、提訴請求は監査役になされる→Fは兼任禁止で、監査役ではない→でもAは自らFを監査役にさせてるから矛盾挙動で違法と主張は許されない。

みたいな流れで書ければ、良かったか。

 

 

 

 

 

令和4年 予備試験  民法  再現

設問1(1)

1 Bの請求の根拠は、請負契約の報酬の減額請求である(民法「以下法名略」636条反対解釈、559条、563条)。Aは、Bから「外壁の塗料には塗料αを使用して欲しい」と申し入れられていたにもかかわらず、塗料βを使用していたのだから「契約の内容に適合しない」として、Bの請求は認められそうである。

2 しかし、636条において契約不適合の場合に減額請求が認められる趣旨は、通常、契約不適合の場合には、目的物の客観的価値が下がっているという点に求められる。その為、形式的にみて契約不適合に当たるという場合でも、目的物の客観的価値が下がっていないという特段の事情が認められるであればこの減額請求は認められないものと解する。

3 塗料βは、塗料αよりも耐久性が高く、防汚防水性能にも優れており、高価であり、その為に、甲建物は、外壁塗装を塗料αで行った場合よりも、外壁塗装を塗料βでおこなったことにより客観的価値が高くなっている。また、Aが塗料βを使用した経緯は、周辺住民とのトラブルを避けるためというものであり、この点においても、甲建物の価値は、塗料αで外壁塗装をした場合よりも、塗料βで外壁塗装を行った場合の方が、客観的価値が高くなっている。その為、上記の特段の事情が認められ、Bの減額請求は認められない。

設問1(2)

1 この請求の根拠も、上記と同様の、契約不適合によるものである。しかし、本件においては、Bは、再塗装を未だしておらず、この時点で「損害」が観念できない。そのため、この請求は認められない。

設問2

1 Fが援用する乙不動産の取得事項が認められるための要件は①20年間の占有、②所有の意志、③平穏かつ公然、④他人のものの占有である。以下、この要件を満たすか検討する。

ア Fは遅くとも、令和9年4月1日には、乙不動産の登記を取得している為、この時点から占有が認められる。そして、Fは令和29年4月15日において、取得事項を援用しており、この時点においても占有があると考えられる。そのため、①の要件は認められる。

イ(1)FはEに対して、「乙不動産は、Dが Cから贈与を受けたものであるから」といい、FがDの地位を相続したことにより、乙不動産の所有権を取得したことから「所有の意志」の要件は満たされているものとも考えられる、しかし、実際には、Dは、使用貸借を受けていたにすぎず、Dには「所有の意志」は認められない。その為、相続が「新たな権限」に当たるかが問題となる。

(2)たしかに、相続はその占有形態に変動が認められないから「新たな権限」に当たらないとも思える。しかし、他の承継取得と区別する理由もない為、「新たな権限」に含まれると解する。もっとも、所有者の保護の図らなければならない為、所有の意志を外形的客観的に表示していなければならないものと解する。

(3)Fは、Eに対して、「乙不動産は、DがCから贈与を受けたものであるから、登記名義を自分に移したい。」と相談していることから、この外形的客観的な「所有の意志」が認められる。そのため、②の要件も満たす。

ウ 次に③については、186条によって、推定される。本件においては、平穏かつ公然の占有を覆す事情は見当たらず、この要件も満たす。

エ(1)最後に、④についてだが、FはDが贈与を受けていたと考えていたのだから「自己の物」の取得事項を援用しているものとも考えられる。「自己の物」の時効取得は認められるか。

(2)時効取得の趣旨は永続した事実状態の尊重という点に求められる。そうすると、「自己の物」を占有していた場合でも、その事実状態は尊重されるべきである。そのため、「自己の物」の時効取得も認められる。

そのため、④の要件も満たされる。

2 以上により、上記①から④のすべての要件を満たすため、Fが援用する乙不動産の取得時効の成立は認められる。

 

所感

設問1(1)は現場思考で規範でっち上げ。

(2)は、何も書いてないに等しい。

設問2は、そこそこ書けた気がするが、抜けてる部分がある気がする。

良くてCかDか。

 

11月1日  評価 D

設問1(1)

冒頭で代金減額請求の根拠条文を普通に間違えた。その上で、条文の各要件に正確に当てはめができていなく、いきなり論点に飛びついている印象に見える。

 

設問1(2)

苦し紛れにでも、どの条文により、損害賠償請求をしているのかを指摘しなければならなかった。

ここで、客観的価値が上がってるのが、損害と当たるのかみたいな議論は、現場で考えるのは無理な気がする。

 

設問2

自主占有の転換時期についての吟味が足りない。

 

しかし、このぐらいでもDは貰えるんだなというのは意外であった。

 

 

 

 

 

令和4年 予備試験 刑訴  再現

第1 ①の行為について

1(1)Pは捜索差押令状に「A方居室」(刑次訴訟法(以下法名略)219条1項)としか書かれていないにもかかわらず、キャリーケースの中を捜索している。このように場所のみの記載の令状の効力がその場所に存在する物にも及ぶのかが問題となる。

(2)218条が令状において、「場所」の記載を要求した趣旨は、被疑者の財産権、プライバシー権を保護するとともに不服の申立ての便宜を図るという点にある。そして、物に対するプライバシーは場所に対するプライバシーに包摂されていると解することができる。そのため、令状に場所の記載があれば、その場所に存在する物に対しても、令状の効力が及ぶと解する。

(3)本件においても、キャリーバッグはA方居室内に存在したのだから、令状の効力はキャリーバッグに対しても及ぶ。

2(1)もっとも、このキャリーケースは、甲が所持していたのだから「被告人以外の者の・・物」とも思える。その為、このキャリーバックに対して捜索を行うためには、「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」が必要となる。(222条前段、102条2項)

(2)Pは、甲が覚醒剤に関する物を同キャリーケースに入れて持ち出そうとしていたのではないかとの疑いを抱き、甲に対し、再三にわたり、同キャリーケースを開けて中を見せるように求めたにもかかわらず、甲はこれを拒否している。通常、このような疑いをかけられている場合には、その者が関連する物をもっていない場合には、これに応じるはずである。それにもかかわらず、甲は上記の様な態度を採っている。

この様な状況に照らすと、「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」はあったといえる。

そのため、Pはキャリーケースの中の捜索を行うことができ、この行為は適法である。

第2 ②の行為について

1(1)この行為についても、上記の令状の効力はそのボストンバッグに対しても及ぶものと考えられるが、このボストンバッグはPが令状を甲に対して呈示した後に持ちこまれたものである。その為、この様に令状の呈示をした後に持ち込まれた物に対しても、令状の効力が及ぶかが問題となる。

(2)この点について、令状の提示が要求されている趣旨は(222条前段、110条)は処分を受ける者に受任の範囲を明示させることにより、不服申し立ての機会を与える点にある。そのため、令状の効力が及ぶ範囲は、令状呈示の時点において存在した物のみに及ぶものではない。また、令状呈示時点の物にのみ効力が及ぶとした場合には、偶然の事情により提令状の効力が及ぶ範囲が左右されてしまうため、妥当でない。

(3)そのため、ボストンバッグにも令状の効力が及び得る。

また、ボストンバッグは乙が持ち込んだものではあるが、Pが再三にわたり、その中身を見せる様にいったにもかかわらず、これを拒否していたのだから、「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」にあったといえる。そのため、令状の効力はボストンバックにも及ぶ。

2(1)もっとも、Pらは乙を羽交い絞めにしているが、この行為は「必要な処分」(222条前段、111条)といえるのであれば、適法となる。

ここで、「必要な処分」とは、捜索差し押さえの為の合理的な範囲で必要となる付随処分と解される。

(2)Pらは上記の様に、再三にわたり乙に対してボストンバッグの中身を見せる様に求めているのにもかかわらず、これを断っているため、覚せい剤等を所持している嫌疑が強まっている。この場合には、羽交い絞めにしなければ、このボストンバッグの中身を捜索することは不可能であった。また、羽交い絞めは、乙を殴るなどの強力な有形力の行使を行っていたわけでもない。そのため。この羽交い絞めは「必要な処分」といえる。

以上により、②の行為も適法である。

以上

 

所感

 刑訴は見た瞬間に簡単な問題だなと感じた。これは書き負けてはいけないと考え、令状呈示後の持ち込みの論点で理由を厚く論じるなどの工夫を凝らしてみた。しかし、よくよく考えると、キャリーバッグを開けることについても、「必要な処分」のあてはめが必要なのではと感じるように思える。(なお、試験後twitterを覗いたところ、「難しかった」などの意見多数)色々な論じ漏れも加味した上で、最高でも評価はCが妥当な範囲か。。。。